一言一話 156

下村亮一『晩年の露伴』から。

 

『雪たたき』

 

 この小説のあらすじも、長くなるから割愛するが、『史籍集覧』の畠山記の中にある、「雪タタキノ事」という項は、わずか千字にみたぬ短い文章で、それに当時の歴史的事実をさまざまに織りなして書いたものである。この題の示すように、果たして畠山記の示す明応二年に、畠州堺に雪が降ったかどうか、これは、露伴の探究心を非常にあふっていた。だが、どうしてもその事実はつかめなかったようであった。

 

室町時代のある日の天気を知ろうというのだから、もちろん、当時書かれたものを渉猟するしかないのだろうが、気が遠くなる。