断片蒐集 31 奥野信太郎

 

広大な中国では天と地との対照が鮮やかで、巷のこぼれ話と神意が張り詰めた糸のように繋がっていそう。日本では天が低く、神の住む場所としては役不足

 

街のこぼれ話

街のこぼれ話、というのを中国では街談、巷の物語というふうにいっております。この巷の物語というのは昔は非常に神聖な意味があったので、巷のちょっとしたこぼれ話というものに神意が託されている、という古い信仰があったのです。ですから、町でちょっと聞いた話のなかに神の意思が表示されるという古代信仰、これがおそらく小説というもののもと、最初は神託ということにあったということを暗示していることになるだろうと思います。