断片蒐集 39 アウエルバッハ/剣と恋

 

最近のアニメには騎士が多く登場するが、作者が意識的なのかはともかく、伝統に則っている。 

宮廷世界を縁取りする規範

宮廷世界において、武勲と恋愛以外のものは生起すべくもなく、さらに、この二つもまた特殊な性質のそれなのである。それらは、しばし滞留し得るといった類の事件や情感ではなく、完全な騎士である人間と絶え間なく結びつき、騎士を定義づけるものとなっている。したがって騎士たるものは、一刻も武器の冒険、恋の葛藤を離れることができない。もしそのような事態になったとすれば、彼は自己を失い、もはや騎士ではなくなるはずである。このような架空の生活形式を最も明瞭に解釈したのは、またしてもアリオストあるいはセルバンテスであり、その晴朗な転換とパロディーなのである。