一言一話 9

 

 

ポー 失神

 ポーは失神を、いわばわれわれの存在内部における墜落として、まず肉体的なものの意識が次々と消え、ついで道徳的なものの意識が消える存在論的な意識として、記述する。もしも人が二つの領域の境目にある力動的想像力によって生きることを心得ればーーいいかえれば人が真にまたもっぱら、心象のもっとも大切な形である想像的存在であるならばーーエドガー・ポーがいうように<<超現世的な深淵のあらゆる雄弁な思い出>>を喚び起こすことができるだろう。

 身体と結びつかないものは、空虚な概念でしかない。「超現世的な深淵」も失神と同一視されることによって肉づきのある観念になる。