一言一話 8

 

 

ポー 力動的想像力の優位

 彼は客観的なイメージのフィルムをくり広げる前に、読者のたましいのなかに、この想像的墜落を導入する手段を見出さねばならぬ。まず心を揺り動かし、それから見せねばならぬ。作家が心の奥底でたましいを動かす本質的な恐れによってたましいを感動させたときには、推論的な恐怖の装置は二次的な役割しか果たさない。エドガー・ポーの天才の秘鑰は、力動的想像力の優位にみずからの根拠をおいていることである。

 気球による冒険や、大海原での恐ろしいスペクタルも書いているが、「アッシャー家」や「リジイヤ」の印象の方が強いせいか、力動的想像力と言われてもピンと来なかったのだが、思えば、ポオは力動的想像力によってしか成り立ちようがない宇宙論ユリイカ」も書いていたのだった。