一言一話 18

 

 

 

 

 

エロティシズム

 

 エロティシズムについては、それが死にまで至る生の称揚だと言うことができる。適切に言えば、これは定義ではない。しかし、私はこの言い方が何よりもよくエロティシズムの意味を伝えていると思う。正確な定義が問題ならば、たしかに生殖のための性的活動から出発しなければなるまい。エロティシズムは、その特殊な一形式なのである。生殖のための性的活動は、有性動物と人間とに共通しているが、しかし明らかに人間だけが、みずからの性的活動をエロティックな活動たらしめたのである。すなわち、エロティシズムと単なる性的活動とを区別するところのものは、生殖や子供への配慮につながる自然の目的とは独立した、一つの心理学的な探求なのである。

 一時期の澁澤龍彦が盛んに引用していたので、冒頭の文章は澁澤の愛読者には有名だろう。澁澤の学生時代からの友人であり、同じくフランス文学者の出口有弘が、バタイユ思想書は、もっと厳密に、哲学書として役なさねればだめだ、と批判したのも有名。