断片蒐集 49 マイケル・エイヤー/その実体は・・・
伝統的な実体とは、馬は4本足で、たてがみとしっぽがあり、顔は細長く、乗ることができるなどといった五感から得たものの集大成であり、むしろロックはカント的な、五感から得られる情報をすべて取り去った後に残る「物自体」的なことを考えていたことになる。
実体は複雑観念
伝統的なカテゴリーの教義では実体と他のカテゴリーとの間に根本的な相違があるが、ロックにおいては単純観念とその他の相違が最も重要である(「単純様相」は特別扱い、限られた意味でのみ単純である)。伝統的論理学は「人間」や「馬」といった実体を「単純名辞」の範例とする。複雑性の範例は、実体がそれを形容するものと、偶然的なものと結びついたときにあらわれる。他方、ロックはその認識論において、我々のもつ実体の観念は複雑観念だと主張した。