ブラッドリー『仮象と実在』 128
...[完璧な存在とはただ一つしかない。]
しかし、誤りは我々の注意を真理へと向けることもあり得る。我々は、大きいものと小さいもの、二つの完全が隣り合って存在することが可能であるか問うことになる。そして、それについては否定で答えねばならない。もし我々が完全性をその十全な意味で捉えるなら、二つの完全な存在を想定することはできない。それは一方が他方に大きさにおいてしのぐからではない。それはまったく無関係である。有限な存在と完全性とが両立不可能であるからである。全体であるには足らず、全体の内部にある存在は、本質的に、自身ではないものと関係している。その内奥の存在は外部にあるものに影響され、またそうであるよりない。その内容には、内部だけで完結することのない関係が存在する。そのような場合、理想と現実とが決して一致されないことは明らかである。そして、その不統一はまさしく我々が不完全ということで意味したものである。かくして、不完全性、不安定、満たされることのない理想は有限なものの運命である。正確に言えば、絶対を除けば、個別的なものや完全性は存在しない。