ケネス・バーク『歴史への姿勢』 69
... 党派 Sect
「窮地に追い込まれる」危険に直面し、新たな集団を形成することでそれに対抗しようする者たち。その共同性によって、新たで確かな作戦基盤が与えられ、敵対者から権威シンボルとして認められているものを盗むために出撃する。党派は、排除という要素が最上位に置かれている限り、防衛的で、否定的な「分裂の」傾向に常に脅かされる。
トレルチは、読み書きの広がりが党派主義に果たしている部分があることを指摘した。党派主義は、「植民地的な思考法」である。同じような考えをもった者たちが、そのユートピア的ヴィジョンを官僚的な組織に翻訳することで物質的な共同作業を発展させれば、十全な表現に達する。しかしながら、読み書きの広がりは、通常物質的体制を欠いた、「精神の植民地」というより微妙な形の植民地をつくりあげる。読むことによって、世界のあらゆる場所、歴史のあらゆる時代に散らばった者のなかから「仲間を募る」ことになる。
十九世紀は、物質的精神的双方において、党派的植民地が特に多い時代だった。専門科学の植民地があった。そして、そこここに自分を見失った孤独な人間がいて、あれこれの曖昧な共同性の一員となることで、アイデンティティを形づくったのである。