ブラッドリー『論理学』74

 §3.同一性の公準は、同語反復の原理の意味にとると、明らかな誤りに過ぎない。問題は、こうした誤りのもとは論理学から完全に抹消してしまったほうがいいかどうかである。同一性の公準が差異の公準のように正当なものでないなら、それにどのような形を与えるにしても、分析判断や他のどんな判断の原理でもない。他方で、伝統的な形式が重要な真理を伝えているなら、なにか得られるものがあるかもしれない。それが真の公準であり得るのかどうか同一性の原理を解釈してみよう。

 

 §4.あらゆる判断において、我々は主語と述語の同一性を主張しているのだと言えるかもしれない。我々の主張する諸要素間のつながり、つまりあらゆる関係とあらゆる差異は事実全体のなかでのみ効力をもつ。あらゆる属性は主語の同一性を含んでいる。この意味にとれば、同一性の原理が真なのは確かであろう。しかし、これは論理学の目的にとって特に注目すべき意味ではない。