ブラッドリー『論理学』75

 §5.それが真であれ批判にさらされるものであれ、少なくとも推論の<必須条件>である最も重要な原理がある。それを同一性の原理と名づけるのが最良で、というのもその本質は差異のなかの同一性を強調することだからである。この原理とはどういうものか。それは次のように運用される。「真理はいつでも真である」、あるいは「真は常に真であり、偽は常に偽である。真理は私と独立の存在であり、変化や偶然にも左右されない。空間や時間が変化しても、出来事や文脈がどれほど変わっても真が偽になることはあり得ない。私の言ったことが本当に真実ならば、それは永久にそうなのである。」

 

 このように原理が言明されると、非常に明確とは言えないが、多くの読者に受け入れられるだろう。しかしながら、その意味するところは実はより限定的で、より歓迎されないものとなろう。同一性の真の公準とはこうである、つまり、<ある文脈において真であるものは別の文脈でも真である>。あるいは、出来事の変化によって偽になるようならば、それは本当の真理ではない。

 

 §6.ほとんどの読者にとってこの公準が間違った陳述に思われるだろうことは疑いない。これは以前の議論(第二章)が理解されたかどうかのテストとして役立つだろう。直接に現象に関わらないものを除く、あらゆる判断が最終的には仮言的なら--それが単に形容詞のつながりを主張しているだけなら、Aが<与えられた>ときBが続かねばならない--いかなる条件の下でもそれは常に真であるだろう。後に、あらゆる推論においてこの結論が論理的思考の原理と仮定されており、それなしでは一歩も論を進めることができないことを見ることになろう。