ブラッドリー『論理学』77

 §9.推論の本性を論じるときに、我々は原理の意味をもっと十分見ることになろう。ここでの結論は、あらゆる判断は、それが真であるならば、出来事の流れによって変更されることのない究極的な実在のなんらかの性質を主張している、ということである。ここは形而上学的な議論をする場ではないし、同一性が実在についての我々の見方のなかに含まれていないのかどうか問おうともしないだろう。もしなにかが個的であるなら、それはすべてを通じて自己同一的であり、多様性のあらゆる場においてその性格を保っているに違いない。



矛盾の原理

 

 §10.同一性の原理と同じように、矛盾の原理もしばしば誤解されている。最終的に、それは常に形而上学的議論の領域に触れなければならないのである。しかし、論理学的目的に満足なようにそれを定式化することは容易であると私は思う。

 

 この公準は心にあらわれるすべてのものを説明しようとはしないこと、相容れないものの存在を考慮しようとしたりはできないし、すべきでもないことを言っておく必要がある。相反、両立不可能性、矛盾が存在するのは、それらが基づく事実にである。ある要素が他の要素と相容れないのは事物の性質として当然のことであるが、そうした存在が自然のなかにあり、異なった風にはあり得ないことについてそれがほんの僅かでも根拠を示すことはない。このことを忘れると、矛盾の法則はおびただしい錯覚を生みだすこととなろう。