2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

幸田露伴芭蕉七部集『冬の日』評釈の評釈1

木枯の巻 (貞享元年の八月、『野ざらし紀行』として残っている旅に出た芭蕉が、陰暦一〇月も終わりの頃名古屋に入り、以後一一月の初めにかけてなったのが『冬の日』の五歌仙だとされている。名古屋で待ち構えていたのは、必ずしも芭蕉の句に傾倒していた俳…

トマス・ド・クインシー『スタイル』12

それ故、法の適用といったことの正確な説明にでさえその歴史に赴かねばならず、我々自身の社会的必要性からの単なる類推では充分でないとすれば、芸術や知的愉しみのあり方を説明するにはそれ以上のものが必要とされるだろう。なぜ古代には風景画はないのか…

ブラッドリー『論理学』37

§44.我々は普遍的判断の共通の型に達した。我々がすぐに気づく点は、そうした判断はすべて形容詞に関わるということである。それは内容の諸要素間のつながりを主張し、出来事の系列のなかでそれらの要素が占める位置についてはなにも言わない。「正三角形…

トマス・ド・クインシー『スタイル』11

我々の論及がどうなったにしろ、スタイルが日常の実際的なものとして必然性が高まっていることを主張して結論にしたい。公的な関心が主題ならば、常にそれに見合った(文学が成長すれば)競合がなされるだろう。他のことが同じなら、あるいは同じに見えるな…

ブラッドリー『論理学』36

§42.我々は単称判断の三つのクラスを考慮し、それがどのようにしてあらわれてくる実在に観念を当てるのかを見てきた。我々は既に存在判断を先取りしてしまったので、それについては手早く扱うことができる。ここでは肯定判断に限ることにすると、すぐに言…

トマス・ド・クインシー『スタイル』10

スタイルについての議論で数多くある誤りのうちの一つは、良いものであれ悪いものであれ、スタイルが責を負うべき諸性質のリストがつくられるのだが、それはすべてを数え上げたと確信できるようなアプリオリに演繹される原理に基づくものではなく、試験的な…

ブラッドリー『論理学』35

§40.多くの難点に出会い、そのうちのいくつかは解決できたと私は信じているが、単称判断の第二の区分についての考察を終わることになる。第三の、時間における出来事の数に限定されない判断に移らねばならない(§7)。しかし、先に進む前に、しばらく時…

トマス・ド・クインシー『スタイル』9

さて、我々はこうした重要な点をフランスとの比較で見てきたので、今度は同じ点をドイツと比較して完全なものにしてみよう。比較の目的ではなく、それ自体を見ても、ドイツの散文の性格というのは十分驚きに値する対象である。我々の散文のスタイルの理想か…

ブラッドリー『論理学』34

§38.ここで我々は多分、個的な(あるいは個別のと言ったほうがいいかもしれない)事実の観念と言うときなにを意味しているのかについて言うことができる。それを決して単一の出来事に限定されない人間の名前に見つけようとしても無駄であった。個別性とい…

トマス・ド・クインシー『スタイル』8

かくして、フランス人作家には、どんなにその精神が異なっていようと、主題が異なっていようと、文の短さ、素早さ、そっけなさが見いだされる。パスカル、エルヴェシウス、コンディアック、ルソー、モンテスキュー、ヴォルテール、ビュフォン、デュクロ、み…

ブラッドリー『論理学』33

§36.過去の記憶、未来の予測は、明らかに単なる想像とは区別される。前者においては、知覚にあらわれた実在への指示がある。事実への関係を含むがゆえに真であるか偽であるかの判断をもつ。しかし、想像はこの指示を欠いている。前に見たように(第一章§…

トマス・ド・クインシー『スタイル』7

だがなぜであろうか。このどこにでも共通で、我々が見るところではごく当然に思える欠点から国を挙げて免れている原因は、免れているという事実と同じくらい我々の注意を引く。この欠点とは、想像するに、二つの条件があるときに避けがたい。第一に性急さで…

ブラッドリー『論理学』32

§34.もし現象ということで知覚する事物、あるいは我々に与えられる事実やあらわれを意味するならば、地平線の向こうにある英国全体(アメリカとアジアは言うまでもなく)、過去と未来の出来事のすべては現象では<ない>ことになる。それらは知覚される事…

SFっぽいけどSFじゃないと言われればそれでも結構な映画

アンドレイ・タルコフスキー『惑星ソラリス』 惑星ソラリス Blu-ray 新装版 ナタリア・ボンダルチュク Amazon ロバート・アルトマン『クインテット』 クインテット [DVD] ポール・ニューマン Amazon ウォン・カーウァイ『2046』 2046 [DVD] トニー・レオ…

トマス・ド・クインシー『スタイル』6

だが、多分こうしたことすべてを示すには、英国のスタイルを我々の最も重要な隣国であるフランスとドイツのスタイルと並べてみることがいいだろう。文明の主導者であり、知的な意味において<力>があるということになれば、ヨーロッパには三つの国しかない…

ブラッドリー『論理学』31

§32.しかし、そうした連続性とその結果である所与の「これ」の拡大は、他の観念的構築と同じく、同一性に基づいている。後に見るように、推論は常に、識別しにくいものの同定にかかっている。性質の同一性は真の同一性を証明する(第二巻第一章第六章を見…