2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

一話一言 46

演劇のエクリチュール―1955-1957 (ロラン・バルト著作集 2) 作者:ロラン・バルト みすず書房 Amazon バルザックとリアリズム バルザックはリアリズムの作家である。というのも彼は人間関係を最終的には政治的関係としてとらえたのだ。ここにはまさに新たな思…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 20

. 修辞と原始魔法 カーディナーの引用は「ナヴァホ族の魔法」についてのC・クルックホーンの論文からとられていて、魔法を修辞学の範囲にもたらすような観察が含まれている。実際、魔法がその背後にもつ個人的な富、権力、復讐へと向かう動機は、<部族的な…

ブラッドリー『仮象と実在』 141

[すべての自然は拡がりであろうか。267-269] しかし、先に進む前に、いくつか興味のある点を扱おう。これまで我々は物理的世界を延長として取り扱ってきたが、そうした仮定は正当化されるのかどうかという疑いが生じるかもしれない。拡がりは自然には本質…

一話一言 45

文学のユートピア―1942-1954 (ロラン・バルト著作集 1) 作者:ロラン・バルト みすず書房 Amazon 古代ギリシャ人とワイン 一般的に、大量の水で割ったワインしか飲まなかった(ワインはたったの八分の一まで)。酔うにはそれで充分すぎるほどだった。生のワイン…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 19

.. 修辞の「行き先」(個人の魂) 我々の整理によると、唯一無二の個人は象徴の範囲に収まる。しかし、だからといって、いわゆる「個人心理学」にもそれが当てはまると考えるべきではない。特に、フロイトの神経症患者に対する関心には、修辞的な要素が強く…

ブラッドリー『仮象と実在』 140

...[それはある現象の諸条件の単なる体系であり、相矛盾する抽象物である。] このことによって、我々には避けられぬ結論がもたらされる。(1)物理世界は一つのあらわれである。それは徹頭徹尾現象である。それは二つの未知のものによる関係であり、未知のも…

一話一言 44

文学のユートピア―1942-1954 (ロラン・バルト著作集 1) 作者:ロラン・バルト みすず書房 Amazon 対話 〈対話〉――世紀から世紀にわたって、同クラスの作家同士の間で交わされるあの二重唱ほど、フランス文学に固有で、かつ貴重なものはない。パスカルとモンテ…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 18

.. 率直な同一化と狡猾な同一化 自己欺瞞という考えは、また別の可能性の領野をもたらす。同一化を通じ、修辞的動機が、行為者の意識的な方向づけなしに働きうるような広い領域が存在する。古典的な修辞学は、修辞の明らかな企図を強調した。しかし、修辞学…

ブラッドリー『仮象と実在』 139

...[その本質には二律背反が存在する。それは未知のものと未知のものとの関係である。] 二律背反の形でそれを述べることができる。(a)自然は私の身体にとってのみ存在する。しかしまた、他方において、(b)私の身体は自然にとってのみ存在する。 (a…

一話一言 43

幸田文の箪笥の引き出し (新潮文庫) 作者:青木 玉 新潮社 Amazon 幸田露伴の愛用品 懐中物の財布は菖蒲革、小銭入れはいわゆるがま口がま口した口金のパチンとなるもので茶の裏皮、煙草入れと煙管入れは対の山椒粒大の相良繍で模様が一面に刺してある。これ…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 17

.. 科学の二重の可能性 しかし、ここはいくら注意してもしすぎることはない。宗教、政治、経済は、周知のように面倒な問題であり、今日の多くの人間にとって、応用科学の崇拝はそれらを一つにまとめる原動力となっている。このことを明らかにするのは痛みを…

ブラッドリー『仮象と実在』 138

.. 第二十二章 自然 ...[自然――その我々にとっての意味と起源。] 自然という語は、もちろん、一つ以上の意味がある。私はここでは、物理的な世界というだけの意味で、純粋な物理学の対象であり、精神の外側にあらわれるものとしてこの語を用いるだろう。心…

一話一言 42

殺したのは誰? 『三つ数えろ』は何回見ても内容がよくわからない映画だが、脚本家も例外ではないようだ。リー・ブラケットはこう言っている。 誰が見ても混乱すると思う。椅子に座って、ばらばらに解きほぐしてしまうと混乱してしまうような本なの。ページ…

ケネス・バーク『動機の修辞学』 16

. キリスト教後の科学における「贖罪」 十字架にかけられたキリストの犠牲によって贖罪の観念を形成した文化で、社会化の諸過程が世俗化されてしまったキリスト教後の科学においてなにが生じているのだろうか。犠牲となった王を祀る司祭の必要は徐々に減じて…

ブラッドリー『仮象と実在』 137

...[独我論に含まれる真実。] ある抽象の神格化だと考えると、独我論はまったく間違っている。しかし、その間違いから我々がときに見落としがちな真実の断片を拾い集めることはできる。まず、第一に、私の経験が全世界そのものではないが、この世界は私の…