幸田露伴

一言一話 150

下村亮一『晩年の露伴』から。 八百善 食物のことになると、八百膳の話はよく出た。昭和になって、銀座に浜作が出来ると、ときたま出向いたが、矢張り、料理のことになると、八百善のことになった。八百善の主人がものした、料理の本があるといっていたが、…

一言一話 159

下村亮一『晩年の露伴』から。 露伴の句 露伴の句の中に、「ああ降ったる雪かな 詩かな 酒もかな」というのがある。 詩が酒とともにある。

一言一話 158

下村亮一『晩年の露伴』から。 香を見つける 露伴は、「香」を見つける一番の早道で、しかも金のかからない方法を伝授してくれた。 「散歩に出るとき、一つの目標をもつんだね。たとえば道路わきのドブの中に、電柱の朽ちて埋もれているようなのを見つけたら…

一言一話 157

下村亮一『晩年の露伴』から。 支那文学 「支那文学を正しく評価しない者が、支那を誇大な表現をもちいる国だとか何だとかいうのは、まことに困りものだね。何といっても支那は文字の国だよ、表現も厳格だし、そんな誇大な、だらしないものではないんだ」(…

一言一話 156

下村亮一『晩年の露伴』から。 『雪たたき』 この小説のあらすじも、長くなるから割愛するが、『史籍集覧』の畠山記の中にある、「雪タタキノ事」という項は、わずか千字にみたぬ短い文章で、それに当時の歴史的事実をさまざまに織りなして書いたものである…

一言一話 155

下村亮一『晩年の露伴』から。 露伴 浮かし燗 露伴の自宅での酒の燗は、露伴流といってもよいもので、少量の酒を銚子に入れ、それを人肌の燗で、長い時間を、同じ温度で楽しむという、きわめて贅沢で、家人泣かせのものであった。いうところの「浮かし燗」と…

一話一言 43

幸田文の箪笥の引き出し (新潮文庫) 作者:青木 玉 新潮社 Amazon 幸田露伴の愛用品 懐中物の財布は菖蒲革、小銭入れはいわゆるがま口がま口した口金のパチンとなるもので茶の裏皮、煙草入れと煙管入れは対の山椒粒大の相良繍で模様が一面に刺してある。これ…

露伴の齋藤緑雨の葬式における弔辞

明治の話題 (ちくま学芸文庫) 作者:柴田 宵曲 メディア: 文庫 齋藤緑雨の葬儀が、露伴を含めて数人の参列者によって執り行われたときの様子は、山田風太郎の明治ものの短編に描かれていた。柴田宵曲の『明治の話題』には露伴の弔辞の一部が紹介されている。…

裸の営為ーー幸田露伴『ウッチャリ拾ひ』

幸田露伴 (日本幻想文学集成) 作者:幸田 露伴 発売日: 1991/10/01 メディア: ハードカバー 埋め立てが大規模におこなわれるようになったのは、江戸時代に入ってからで、日比谷の辺りまで入り江が食い込んでいた。現在の中央区、江東区、港区の一部は江戸時代…

幸田露伴を展開する 13 「白芥子句考」

芭蕉紀行文集―付嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1) 作者:松尾 芭蕉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1971/11/16 メディア: 文庫 師匠や仲間に迷惑をかけることを恐れたのか、保美に蟄居していた杜国にはほとんど句は残っていないが、杜国という号を捨て、野人…

幸田露伴を展開する 12

芭蕉紀行文集―付嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1) 作者:松尾 芭蕉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1971/11/16 メディア: 文庫 また、『野ざらし紀行』の貞享五年冬の句、 市人にいでこれ売らん雪の笠 この句は、『野ざらし紀行』では「市人よ此笠うらふ雪の…

幸田露伴を展開する 11

芭蕉七部集 (岩波文庫 黄 206-4) 作者:松尾 芭蕉,中村 俊定 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1966/03/16 メディア: 文庫 芭蕉と杜国と白芥子との因縁はこれだけではない。貞享四年十月二十五日から翌年、五年四月中旬までの旅を記した『笈の小文』では既…

幸田露伴を展開する 10

芭蕉七部集 (岩波文庫 黄 206-4) 作者:松尾 芭蕉,中村 俊定 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1966/03/16 メディア: 文庫 完本 風狂始末―芭蕉連句評釈 (ちくま学芸文庫) 作者:安東 次男 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2005/03 メディア: 文庫 白芥子…

幸田露伴を展開する 9

芭蕉紀行文集―付嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1) 作者:松尾 芭蕉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1971/11/16 メディア: 文庫 ここからこの句に対する露伴の本論がはじまる。先に挙げた加藤楸邨の評釈に明らかなように、「白芥子」の句は、次の句、「牡丹蘂…

幸田露伴を展開する 8

芭蕉語彙 (1984年) 作者:宇田 零雨 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 1984/02 メディア: - 幸田成友著作集〈第1巻〉近世経済史篇 (1972年) 作者:幸田 成友 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1972 メディア: - 8 『白芥子句考』は、この句が何年に、ど…

幸田露伴を展開する 7

芭蕉紀行文集―付嵯峨日記 (岩波文庫 黄 206-1) 作者:松尾 芭蕉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1971/11/16 メディア: 文庫 芭蕉俳句新講〈下巻〉 (1951年) 作者:潁原 退蔵,松尾 芭蕉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1951/08/10 メディア: 単行本 芭…

幸田露伴を展開する 6

6 坪内逍遙宛ての書簡で賞賛し、晩年には『七部集』と呼ばれる、芭蕉門弟たちの連句、発句を集めたものの評釈にかかり切りになったことからも、露伴の芭蕉に対する敬愛の念はほぼ生涯を一貫して変わらなかったと思われるのだが、以前から私にとって疑問に思…

幸田露伴を展開する 5

5 明治二十八年に書かれた小説『新浦島』は、露伴の小説がもつジレンマが赴くところを象徴的にあらわしている。浦島太郎の一族の末裔である次郎は、揃って死んだ両親の遺体が、一片の骨を残して跡形もなく消え去っているのに驚く。平凡な漁師夫婦と思ってい…

幸田露伴を展開する 4

風流仏・一口剣 (岩波文庫) 作者:幸田 露伴 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1988 メディア: 文庫 4 初期の露伴には、確かに仏教的な要素が色濃い。しかし、露伴が求めたものは、仏教が与えてくれるように思えるある境地である。それは、ある種の悟りか…

幸田露伴を展開する 3

3 江戸時代の戯作は、主に遊里を中心とした閉ざされた場で、限られた人間関係が組合される。そうした枠組みと決まりきったパターンをなくしたときに、どう「世の人情と風俗」を写し取ることができるかが逍遥の問題だった。二葉亭四迷も、森鷗外も、夏目漱石も…

幸田露伴を展開する 2

小説神髄 (岩波文庫) 作者:坪内 逍遥 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2010/06/16 メディア: 文庫 2 坪内逍遙宛ての書簡の内容は小説のことに関わる。 小説家としての露伴の活動は二つの時期に分けられる。『露団々』から『天うつ浪』が中断に終わるまで…

幸田露伴を展開する 1

芭蕉全発句 (講談社学術文庫) 作者:山本健吉 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/01/06 メディア: Kindle版 1 夏目漱石などとは異なり、幸田露伴は筆無精であったらしく、全集で書簡に一巻分を当てられているが、特定の時期を除けば、実務的な内容のもの…