2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ブラッドリー『仮象と実在』 225

[自然、美しく敬慕に値する] 我々の注意を再び自然、あるいは物理的世界に向けよう。観念とは力であり、目的を持ち、そこで動いていると主張されるだろうか。また、自然とは美しく、崇拝の対象となることは可能だろうか。後者について私は最初に考察するこ…

よろずの紙反故 24

仏像を上げ下げしたる京の春 上潮にカモメが落ちる茅ヶ崎へ 揚げ代にのしをつけたる王の侍者 カフェロマン揚げ出し豆腐の蜜の味 テルミンが忍者屋敷を開け閉てし

一言一話 128

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 原稿を書く速さ遅さ 芥川さんが一ト晩苦吟してやっと二枚、鈴木三重吉の「桑の実」の中に、梅雨になる頃の描写があるが、ホンの五六行の文章を書くのに、書いては消し、書いては消し、同じとこ…

ケネス・バーク「特殊詩学、一般言語」 2

II これで次の段階、特殊な詩学から一般的言語への問題に移る準備ができた。そこへの最短の近道は、少々離れてみることである。第一に、「動物性」と我々が「象徴性」と呼ぶもの(他にいい名称がないので)との相違に注目しよう。なにかを言うこと、なにか…

ブラッドリー『仮象と実在』 224

[現象と絶対] 我々はこの章で主として、否定に関わるものを扱ってきた。あらゆるものは現象であり、いかなる現象も、あるいはその組みあわせも実在と等しくはない。これはなかばは真実であるが、それ自体としては危険な間違いである。我々はそれに対応する…

フリー・インプロヴィゼーションについて私が知っている二、三の事柄 1

ジャズ・アヴァンギャルド―クロニクル1967‐1989 作者:清水 俊彦 青土社 Amazon わたくしはほとんど朝から夕方まで音楽を聴いているが、節操なく聴いているので、まったく詳しくはない、聴けば聴くほど新しいものを聴きたくなって、そもそもあまり蓄積という…

ケネス・バーク「特殊詩学、一般言語」 1

[(Language as Symbolic Action: Essays on Life, Literature, and Method)] [Author: Kenneth Burke] published on (July, 1978) Amazon 【『象徴行動としての言語』もちょっとだけ訳したので、ちょっとだけ。】 I まず第一に取り上げるのはポーのエッセイ…

よろずの紙反故 23

朱を奪うものさえいない湿潤地 来年の揚げ足をとるミカエルよ 音階のあげくのはてがアボカドに 明け方に雲隠れする管財人 宝玉を磨き続ける夜の明け

一言一話 127

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 菊正宗 さて、菊正宗だが、酒飲みは異口同音に菊正がいゝと言う。私の知っているだけでも、鈴木三重吉、水上滝太郎、室生犀星などは菊正党で、戦争前まで、銀座の鉢巻岡田、日本橋の灘屋の二…

ブラッドリー『仮象と実在』 223

[現象、言葉の意味] 我々の経験のどの側面も、それだけで実在になるものではないことを見てきた。なにものも主要なものではなく、他者や全体を説明する助けになることはできない。それらはすべて現象であり、すべて一面的で、その向こうに去って行く。しか…

よろずの紙反故 22

枝折戸でハイスミスにたつ悪名 象限儀ナイトばかりで攻めあぐね オプションであぐらで座る風俗嬢 悪霊や下仁田ネギのぬたの色 女郎蜘蛛あくる朝には空を行き

一言一話 126

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 芥川龍之介と砕氷機 いつかなど、本郷の切通しを歩いていると、「砕氷機」という大きな看板が目に付いた。すると、芥川さんが、 「砕氷機というのはおかしい」 と言い出した。 「おかしいことは…

ブラッドリー『仮象と実在』 222

[意志の優先は幻覚である] この結論で先へ進むことができるが、その前にいわゆる意志の優先性といわれるものについて一言述べずにはおけないと信じる。第一に、意志が実在であるなら、いかに仮象がその土壌と関連しているか示す責任がある。そして、我々の…

カンヴァセーション・ピースーールキノ・ヴィスコンティ『家族の肖像』(1974年)

家族の肖像 バート・ランカスター Amazon ヴィスコンティは、数人の監督によるアンソロジーの何本か、そして『異邦人』を除いてはすべて見ていると思うのだが、いずれも三十年以上前、しかもせいぜい2~3回しか見ていないので、記憶の彼方にぼんやりしてい…

よろずの紙反故 21

あやとりにあぐねて眠る萩の月 二階から神棚をつるあくびかな 悪筆の恋文を読む長月夜 紫のボトムズをはく悪魔かな 宣教師あくまで円を描き続け

一言一話 125

食いしん坊〈1〉 (朝日文庫) 作者:小島 政二郎 朝日新聞社 Amazon 横光利一伝授の雑煮 横光伝授の食べ物のうち、未だにわが家で愛用している一つに、正月の横光雑煮がある。それは、まずお餅をそのままゴマの油でちょいと揚げて、それを雑煮汁の中で少し煮て…

ブラッドリー『仮象と実在』 221

[知りうる限りの宇宙] 全体としての宇宙は知りうるものであるといわれる。完璧な知性によって完全に知りうるものとされる。また、その性格によって取り上げられ、吸収されるので、世界のあらゆる要素は知りうるものである。(2)しかし、宇宙は完全に理解…

よろずの紙反故 20

あくたれる君が夢みる羊水の頃 両腕を袖に繰り込む悪女かな かすみにはあくどいだけが身の誇り お湯で割る阿久根焼酎奈落の夜 悪念で救世済民如来かな

一言一話 124

食いしん坊 1 作者:小島政二郎 文化出版局 Amazon 東京の菓子――越後屋 食べ物は、東京より上方の方がうまい。菓子も然り。しかし、大地震前までは――大負けに負けて戦争前までは、東京にもうまい菓子屋があった。例えば、本所一つ目の越後屋、日本橋の三橋堂…

ケネス・バーク「純粋な」文学の三人の達人【『反対陳述』から】4

Ⅲ 女性と言語についてのエッセイのなかで、ド・グールモンは、競争に夢中な若者たちの傾向について述べ、ある種のアジア人は精神的なものの欠如のためではなく、その過剰によって絶滅したとつけ加えている。ド・グールモン自身、ヨーロッパの芸術の歴史のな…

ブラッドリー『仮象と実在』 220

[このことを詳細に示す] 我々はこの結果を、世界の他の側面を知性と意志に還元することを提案することで裏づけることができる。詳細にそのことを見るまえに、あらかじめその必然的で主要な欠陥を述べることができる。宇宙のあらゆる特徴が二つの側面にはっ…

よろずの紙反故 19

悪銭で椿をつくる女工かな 悪僧がステンドグラスに浄土見て 積分が描くグラフに塵芥 悪態を狸にわめく猫女 シンデレラ悪党夢み舟に乗り

一言一話 123

フランス革命についての省察ほか〈1〉 (中公クラシックス) 作者:バーク 中央公論新社 Amazon フランス革命についての省察ほか〈2〉 (中公クラシックス) 作者:バーク 中央公論新社 Amazon 先入見の擁護 あなたがおわかりになるように、わたくしは、この啓蒙の…

「純粋な」文学の三人の達人【『反対陳述』から】3

Ⅱ ウォルター・ペイターについてどんな保留を行なうにしろ、美的な関心対象に向けた彼の優れた適応技術は認めねばならない。進取的な思想家ではなく、他人のアイデアを借りることを常習としており、おそらくは存在したことのない過去に関心を持ち続けた彼は…

ブラッドリー『仮象と実在』 219

[宇宙は思考と意志に還元することはできない] この一般的な結論にあるとき、我々は先に進むことができる。ひとつあるいは二つの特殊な経験の有り様を絶対に還元することは問題ではないことを仮定し 、我々は直ちにその本性と統一の最終的な議論を試みるこ…

よろずの紙反故 18

護符を貼り悪鬼に向かう富三郎 悪口をおみくじに書き枝結び 与平次はたすきを掛けて悪事為し 外苑の悪所に毎夜通いけり あくせくす逆行世界のかくれんぼ

一言一話 122

フランス革命についての省察 (光文社古典新訳文庫) 作者:バーク,エドマンド 光文社 Amazon 人間の本性と社会の複雑さ 日常生活にはいったこれらの形而上学的諸権利は、濃い媒質にさしこんだ光線のように、自然法によって、そのまっすぐな線から屈折させられ…

ケネス・バーク「純粋な」文学の三人の達人【『反対陳述』から』】2

いままで、私は書簡における真に本質的な問題については論じなかった。つまり、彼の美学の研究との関係である。書簡を最後まで検討すると、フローベルは決して自分の気質にあった美学に到達できなかったように思われる。実際、彼がバルザックのような想像力…

ブラッドリー『仮象と実在』 218

[しかし、統一は詳細を知られることはない。最終的な不可解さ] 我々は経験の多様な側面は互いに含みあい、それらを理解し、完璧なものにする統一性を指し示しているのを見てきた。そして、そうした側面の統一は未知のものであることを次に主張するだろう。…

よろずの紙反故 17

明晩のあきれ果てたる君の尻 骨を煮る浮きでる灰汁の曼荼羅よ 純粋な悪を求めて庭園へ キスしても残るは君の悪意だけ トパーズの青さはエマの悪縁か